不思議旅行案内 長吉秀夫 -21ページ目

歩くという事

 ここ数日、都内あちこちを歩き回っていた。大好きな散歩の為ではなく、打合わせやリハーサルなどの為である。元来怠け者の僕にとって、こんな時の楽しみは、歩く事である。毎日、決まった時間にウォーキングをするなどという事は最も苦手なことなのであるが、ちょっとした距離を電車などには乗らずに、ぶらぶらと歩きながら、考え事などをしていると、気分が良い。例えば、渋谷から四谷あたりまでの距離であれば、天気が良ければ最高だ。僕にとって、退屈な日々をやり過ごすには、歩くという事は、自分を活性化するための、最も手ごろな行為なのである。  不思議旅行案内の中にも、そんなことを書いているので、上記に引用してみたいと思う。

胡蝶の夢

 ある種のドラッグには、人を「胡蝶の夢」のような幻覚に誘う力がある。そして、きっとタトゥーはそれを物質化したものなのだ。「胡蝶の夢」をここに、自分の肉体の上に留めておきたいという人々の強い願いが、長い歴史の流れの中でタトゥーを育(はぐく)んできたのではないだろうか。  ワンポイントのファッション・タトゥーにさえも、長い時間の中でバトンタッチされてきた、そんな願いが込められているのだと思う。この本では、そういうことを考えてみたいと思う。  (本文/プロローグより)

タトゥー・エイジ 【目次】

タトゥーエイジ

  プロローグ/胡蝶の夢としてのタトゥー ★第一章 タトゥーを入れるかどうか迷っているあなたへ       タトゥーを入れた新しい自分になりたい      イレズミとタトゥーはどこが違うのか      一生をかけて自分のものにしていく      日本における禁止の歴史 ★第二章 タトゥーのジャンルとカテゴリー      タトゥーを巡る旅は、トライバルから始まる       トライバル/トーテム/アステカ/マオリ/ケルティック/       アメリカン・トラディショナル/バイカー/ニュースクール/       ネオ・トラディショナル/ジェイル・タトゥー/ブラック&グレイ/       ファインライン/ポートレイト/デーモニッシュ/ネオ・トライバル/       バイオメカ/ジャパニーズ・スタイル   ★第三章 タトゥーを最初に入れたのは?       地球上のすべての人間はトライバルなのだ      何千年もの間、人間は自然の力と共生しながら生きてきた      古代、タトゥーは人間である証だった      移動する民と留まる民      ファッション・タトゥーでネオ・トライバルになる   ★第四章 新旧のアニミズムからシンボルを探そう       タトゥを入れて自由になる      ネイティブ・アメリカンのシンボル       カチナ/サンフェイス/ベア(熊)/スパイダー(蜘蛛)/狼の足跡/蛇/亀/熊/       熊の足/コヨーテ/羽根/鷲/フクロウ/七面鳥/太陽/明けの明星/雲/矢/       メイズ(迷路)/手/道化師/ココペリ/ボーダー・スパイラル/       ボーダー・ステップ/ボーダー・ウェーブ/ボーダー・ウェディング      ファッション・タトゥーのシンボルとは何か?       ハート/十字架/涙のしずく/月と星/クローバー/永遠の絆を象徴する結び/       天使/翼/犬と猫/鳥/ハスの花/蜘蛛/蝶 ★第五章 星座を図案化するために       神秘の象徴としてのシリウス      星座の意味を知る       牡羊座/牡牛座/双子座/蟹座/獅子座/乙女座/天秤座/蠍座/       射手座/山羊座/水瓶座/魚座 ★第六章 神話の世界のワンポイント       タトゥーにはスピリチュアルな力が宿っている      ギリシャ神話に登場するオリュンポスの十二神       全能の神ゼウス/天上の女王ヘラ/戦争の女神アテナ/太陽神アポロン/       鍛冶の神ヘファイストス/狩猟の神アルテミス/戦争の神アレス/       美と愛の女神アフロディテ/竃の神ヘスティア/神々の伝令役ヘルメス/       大地の神デメテール/海洋の支配者ポセイドン      インド神話、ヒンドゥとヴェーダの神々       破壊と再生の神シヴァ/再生と創造の神ヴィシュヌ/       維持、宇宙根本原理の神ブラフマー/豊穣の女神パールバティ/       富と学問の神ガネーシャ/富と幸運の女神ラクシュミー/       学問と芸術の女神サラスヴァティ/猛々しく美しい女神ドゥルガー/       血まみれの女神カーリー/ナーガ/ハヌマーン(猿神)/ガルーダ/インドラ/       富の守護神クーベラ/カーマ/豊穣な闇の精霊ヤクシャ ★第七章 魂と生きる聖なる住人たち。聖獣、幻獣、妖精       コミュニケーションとしてのタトゥー      聖なる力を得るために       グリフォン・グリフィン/サキュバス・インキュバス       ドラゴン・サラマンダー・リバイアサン・ワイバーン/シルフ・シルキー・フェアリー       バンシー・エルフ・ピクシー/ハーピー/シー・サーベント/セイレーン       デビル・デーモン/バジリスク/ヒュドラ/マーメイド・マーマン/ラミア       アンドロスフィンクス/フェニックス/バンパイア/コカトリス               ★第八章 花々の言葉とタトゥー       ドラッグとピアッシングとタトゥー      自己認識としてのタトゥー      花言葉を知る   ★第九章 今、ポスト・ニュースクールの時代      新たな日本伝統との出会い      ポスト・モダンとしての粋の世界      アメリカンクラシックからニュースクールへ       エド・ハディーの功績      ひとすじの灯火としてのタトゥー   ★  エピローグ/白い扉を開け、新たな世界へ 

●ジャマイカでのこと

 あの光は、何を伝えようとしていたのか? 僕はあの時、心身ともにリラックスしていた。しかし、それまでの3ヵ月間、僕はそれまでに無いほどの挫折感をあじわっていた。  実は、僕にとって、ジャマイカへ行く大きな目的があった。山川さんのエッセイに連動したCDの制作と、それに伴うツアーのプランを考えていたのだ。  それまでの3ヵ月は、その夢のようなプランを成立させるべく、東京中を駆けずり廻っていた。 「世界中の人が、音楽で繋がれたらどんなに素晴しいだろう。」 そんな思いから、『ママ・アフリカ』という、ピーター・トッシュの名曲をジャマイカのアーティストたちに歌ってもらい、ジャマイカを皮切りに、ニューヨークやロンドンやパリやタンザニアや東京で行おうという、壮大な計画だった。僕は、このメッセージとともに、多くの人と心を繋げたかった。純粋にそう思っていた。 (本文より)

第1章 Jah Guidance ●不思議な光

ひかり

 10年ほど前、僕は決定的な体験をした。それは今までの経験では説明のつかない、しかし、それを否定してしまうと自分自身を否定するような出来事だった。ジャマイカで、不思議な光と接近遭遇したのである。  山川健一氏のエッセイの取材に同行して訪れたジャマイカ、オチョリオスで起きた出来事は、それまでの人生の中でもっとも衝撃的なことであった。  約1週間のジャマイカ取材旅行の最終日の夜。何とかスケジュールを消化してほっとしていた山川氏と僕とカメラマンでデザイナーの山口昌弘氏の3名は、ホテルサンスーシーのプライヴェートビーチのボンボンベットに寝っ転がって、星空の下で雑談をしていた。 僕たちしか居ないビーチで、波の音を聴きながら3名ともリラックスした精神状態だった。  多分、月は出てなかったように思う。  暗闇の中、50m位先の波うち際に、突然、青白い光が現われた。数秒間、空間に静止していたそれは、地上から2m位の高さをキープしながら、ゆっくりと滑らかに僕たちの方向へ飛んで来るではないか! (不思議旅行案内 本文より)               ***<こんな光でした。同じような光を見た方はいらっしゃいますか?情報をお待ちしています!!>

プロローグ

不思議旅行案内

 僕はこの原稿を、ある劇場の舞台裏で書いている。訳あって、数ヵ月前からこの劇場の舞台責任者、いわゆる"小屋付き"として、1日のほとんどをこの舞台裏で過ごしている。コンサートや演劇やダンス、時にはファッションショーやプロレス興業まで行う、都内ではかなりユニークな劇場である。  仕事の内容は、その時々にこの劇場を借りてくれた興業に応じて、外部から入ってくる大道具や照明、音響などのスタッフに対して、舞台を円滑に使ってもらえるようにバックアップすることだ。  簡単に言ってしまえば、裏方の為の裏方のような仕事だ。  本番のある日は、朝から仕込みやリハーサルが行われ、僕らはこの劇場の設備上の細かいクセをうまく使いながら、外部スタッフが使いやすいようにいろいろなものをアレンジしてゆく。本番の入っていない日は、誰もいない舞台上で、例えば糸と針を手に、前回やぶれてしまった袖幕のカギザキを繕ったり、道具用のロープやワイヤーを整理したりしている。  そんな合間を見つけて、旧い、だが十分手に馴染んだMacintoshPowerBookDuo270cで、この原稿を書いていこうと思っている。  思えば、舞台とは不思議な空間だ。  そいつはステージ、客席、ロビー、楽屋、バックヤード、奈落……いろいろな空間が、複合されて出来上がっている。スタッフ、出演者、興業主は、数ヵ月前からその一夜のために準備を進めていくのだ。  人々は、親しい友人や恋人とスケジュールを調整し、チケットを購入し、劇場へと足を運ぶ。様々な準備や待ち合わせを経て、約束の時間に約束の場所に集まり、数時間の空間を共有する。  お客さんは、ステージ上に意識を集中し、熱いイマジネーションを膨らませる。  その時、舞台の上に宇宙が生まれるのだ。  しかし、お客さんはその舞台裏を知らない。そこでは、同じ舞台に意識を集中しながら、様々な仕掛けや技を繰り出してゆくスタッフの存在がある。彼等は創造力に富み、機能的かつ合理的な方法をもってクールに事を進めてゆく。もちろん、お客様は、そんなことを知る必要はない。いや、むしろ僕ら裏方の仕事は、表の人々に気付かれてしまってはいけないのだ。  この本を書きすすめようとしている今、いちばん気がかりなのはそのことなのだ。  僕は、今まで数回、不思議な体験をした。と言っても、TV番組で特番されるような強烈なものではない。今まで忘れていた出来事もある。ただ、ふとした些細な不思議体験が、僕の今までの生活を少し豊かなものにしてくれたように思っている。  今、生活しているこの世界と同じ空間に、別の現実が存在するのではないだろうか? 長い間、僕はそう感じてきた。例えばこの劇場でも、客席から見ているステージ上の世界を境にして舞台裏があるように、現実の世界でも、あるひとつのポイントを境にしたもうひとつの世界が存在しているように思えてならないのだ。それこそが、リアル・ワールドだ。そんな考え方を、僕はいつの頃からかするようになった。 (不思議旅行案内 本文より)

不思議旅行案内 発売されました!

 3月31日に、幻冬舎アウトロー文庫から、『不思議旅行案内~マリファナ・ミステリー・ツアー~』が、発売されました。何度もここで紹介してしまうけれど、1999年に出した『不思議旅行案内~僕らは神秘の中をゆく~』に100ページ近く加筆したものなので、気分的には<その後の不思議旅行記>のような気分です。  僕自身、初めての文庫なので、正直嬉しーです。  みなさん、是非、読んでみてください! そして、感想をお聞かせいただけると幸せです。 追伸 アマゾンの『不思議旅行案内~マリファナ・ミステリー・ツアー~』のページURLは、ここです。 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4344406346/qid=1112457510/sr=8-3/ref=sr_8_xs_ap_i3_xgl14/249-8489485-6238763

見本

ドラッグと文学

 あきらかにドラッグをキメながら書いているであろう本がある。それをどうとらえるのか?
 表現の方法は人それぞれだろうが、僕のスタンスを先に述べると、文学に関しては、それはNOだ。道徳や法律などの問題ではなく、表現者として、ドラッグを対象物として客観的にとらえることが必要だと思うからだ。ドラッグや、ある種のトランス状態の中から得た、パッションやイマジネーションを、こちらの世界へ持ち帰り、その熱を失わずに、真正面から見つめ続けることで、初めて表現は成立するのではないだろうか。
 僕は、この世にある優れた表現物のすべてはドラッグだと思う。本当のドラッグとは、それを通して垣間みたもう一つの世界に存在する自分を見つめ、その後の人生を豊かに過ごすための媒体だと考えるからだ。そして、その中から得た世界は自己責任の上で獲得した、自分自身のものなのだ。
 街角で、迷っている子供たちを裏道に引き込み、自らの稼ぎのために覚醒剤を売るような輩は最低だと、僕は思う。
 2人の娘の親としての僕は、ドラッグについて子供たちに僕の知りうる限りの事を伝えようと思っている。そして、HIVについても伝えようと思う。
 通り一遍な社会的な考えではなく、僕がどうやってドラッグと向き合って来たかを話そうと思っている。その話を聞いた彼女たちは、僕の事を、もの凄く格好悪くて、最低な男だと思うかもしれない。しかし、そうだとしても、それは、僕自身が最低なのであって、僕が見つめ続けて来た、ドラッグの先で出会ったたった一つのちっぽけだけれど光り輝く黒曜石のような心の世界を否定することではない。
 僕は彼女たちに、その、黒曜石の輝きを伝えたい。だからこそ、「不思議旅行案内」を書くにあたり、ドラッグを注意深く、客観的に見つめることが必要だったのだ。
 
トラバ先URL
http://stainless.ameblo.jp/

新聞広告

そういえば、タトゥー・エイジが発売された直後の2月27日の読売新聞に、僕の本の広告が掲載されました。小さな広告かなと思ってみてみたらびっくり!誌面の下にでっかく載ってるではないか!しかも全国版!!
ちょっと嬉しくなってしまいました。

完結編としての、僕の不思議旅行案内

 99年に出版した「不思議旅行案内~僕らは神秘の中をゆく~」を大幅に加筆・修正したものが、今回の文庫「不思議旅行案内~マリファナ・ミステリー・ツアー~」だ。
前回の原稿の第三章「神の草 大麻」では、大麻の歴史や法律、そして、精神世界との関連を書き加え、そして、第10章として「光との再会」を追加した。この10章は、その後の不思議旅行案内とも言える体験談だ。2001年7月にカナダで体験した麻と不思議な光との遭遇を通したエッセイである。
 これらの原稿を追加したことで、100ページ程、前回よりも厚い本になった。読みごたえも充分にあると思う。特に、第1章でジャマイカで出会った光とカナダで再会できたことを第10章に追加できたことで、『不思議旅行案内』が完結したように思う。
 初めての方はもちろん、単行本を読んでくれた方も、是非、このスペシャル・エディションとも言うべき文庫版「不思議旅行案内~マリファナ・ミステリー・ツアー~」を読んで欲しいと思います。